駐在員活動に携わる人たちへ (Draft)


 これは、駐在員活動に携わる人たちへの参考資料である。話の舞台は1980年代後半のシリコンバレーが中心であるが、日本が90年代に失ったといわれることを再生しようとしている現在においても参考になる事例が多くあると考える。何かのヒントになれば幸いである。なお、90年代に現地企業の経営に携わった経験をもとにした話については、「インターネットの光と陰を参考にされたい。ニューヨーク、ロンドン、フィンランド、そしてシリコンバレーの企業がInternetの荒波に巻き込まれ、どんな対応を迫られたかを書いている。Officerの任免、事業の再編、事業提携やM&Aを担当する人たちに参考となる。時効になり、話しても差しさわりがないと思われる陰の部分についても紹介している。

 『駐在員』という言葉は死語になった感がする。10年程前から、海外の子会社に赴任する『出向者』というようになった。海外拠点が増え、各拠点での固有の業務を支援する日本人の出向者も増えた。特定プロジェクト支援の目的で2年間前後出向する。日本側の報告先は所属部門(の部課長)であるという形態が多いようである。

 かつての『駐在員』には、会社の代表、日本の代表だという意識があり、先進技術・産業動向・競合企業の動きを調査分析し、日本がとるべき方向と対策を提言するのだ、という意気込みがあった。日本の本社に物申すと同時に、現地で『新しい仕事を作る』という任務があるとも認識されていた。

 これからグローバルな視点で活動される人たちは、経営環境や顧客・事業・技術の変化に早く気づき、自分の意見を本社に提言し、自らも新しい事業の種を蒔きその芽を育てることが重要な職務であると認識して活躍されることを期待する。

目 次
新任駐在員へ 英語がダメな言語障害者に駐在員が務まるのか?
業務報告の書き方 報連相(ホウレンソウ)のすすめ
情報収集と調査の仕方 自分の専門外の分野の調査を頼まれたら?
・輸出入規制への対応 法的規制には注意しましょう!
・米国での採用条件について 部下を採用する時の注意
・日米ネットコミュニティの文化の違い
・在宅勤務とE-MAILの効用
・米国での会社設立
・採算管理とその意識向上
・米国での開発マネジメントの問題事例
・米国でのソフト製品開発の課題
・人はなぜ辞めていくのか?
・明るいアメリカ人と寡黙な日本人
・国際商品は日米分業から
・米国ISV支援業務について
・米国におけるソフトウェア価格政策
・米国システムビジネスの新しい動き
・日本企業の対米直接投資増大の波紋
・IBM顧客マネジメント教育
・ミシガン大学との共同研究
・米国FEA教授たちをめぐる動き
・新興市場への戦略的対応メモ
・効果と効率について
・フェアネス(Fairness)とは
・喪われていく信頼感(Trust Gap)
・マネジメントに役立つ英語文例集
・英文スピーチ事例


新任駐在員へ

 私が米国に赴任した当初、英語はまったくといっていいほど喋れなかった。朝出勤してセクレタリと顔を合わせて、"How are you" 、"Fine、thank you"なんていう常套文句を言うのが精一杯で、その後の会話が続かず惨めな思いをしたものである。とくに先任駐在員が流暢な英語でペラペラ楽しそうに喋っているのを聞くと、なおさら己の英会話力のなさに腹がたったものだ。

 そんな哀れな言語障害者(!?) が、当時の駐在員の第一の使命であった業界動向の情報収集と調査活動を、一体どうやって遂行できたのか? もちろん、米国に赴任した当初は、英語もしゃべれず、どうやって調査活動をしたら良いのか、途方に暮れていた! そんな中で、最初はとにかく新聞・雑誌・業界誌を読むことしかなかった。その中から興味ある記事を抜き出し、これを翻訳することから仕事の第一歩が始まった、といえる。それは英語記事の読解力の訓練でもあった。英和辞書とニラメッコで一日があっという間に終わってしまう毎日が何日も続いた。しかし、そんな努力の積み重ねが少しずつ自信を生み出し、最初何が書かれているのかじっくりと読まないと分からなかったのが次第に短時間で分かるようになり、業界の動きもだんだん把握できるようになった。それにつれ、市場・技術調査レポートも短期間に書けるようになってきた。

 だが、会話による情報収集や分析は一筋縄ではいかない。米国ビジネスマンと一緒に食事をしながら話をすることの苦痛は、ただただ耐えるのみ! なにが苦痛なのか? 想像して下さい。一生懸命英語の単語と文の構成を考えても出てこないで、「Ahhhh...Uhhhh...」なんていっているのは。阿呆面をさらけ出しているようなものじゃないですか! 誇り高き大和男子には耐えられない、などといっちゃいられない訳だが…。誇りも恥も外聞もすべてかなぐり捨てて裸一貫になって相手に対しないと何も進歩しない。Easier said than done で、そういう殊勝な境地に達するには随分と時間がかかった。そうなるまでは、折角の料理のなんと不味かったこと、というより味わう余裕などなかった。英会話というよりコミュニケーションの能力開発は、見栄を捨て裸になって現地社会の中に飛び込み経験を積むほかないようである。CollegeのAdult schoolに行き友人を作ったり、その家族との交流を深めたり、現地コミュニティのパーティーに参加したりなどして経験を深め体得していくほかない。
話が横道に逸れたが、そんな言語障害者でもなんとかやれるようになったのであるから、何事も成せば成るの気概をもってやることだろう。私の場合、個人的にも仕事に関しても、イロハから教わることができた先任駐在員がおり、彼には今もって大変感謝している。私が彼から教わり、彼が帰任した自己体験で学んだことを、これから出発しようとする新任駐在員に引き継いでいくことが大切と考え、思いつくままに書き残す。

 この数年で当社の米国勤務者は百人を越えるようになり、私が赴任した頃の、のどかさと24時間勤務の激務が奇妙に混じった伝統的駐在員の有り様は過去の遺物になった感もする。しかし、依然として一般駐在員としての活動は日陰の存在だとしても重要なものである。本社からありとあらゆる調査を依頼される。手掛かりを探して、探検者・興信所員あるいはCIA のような仕事をすることもある。わずかな手掛かりから必要な情報を入手でき分析しレポートにまとめあげることの醍醐味もあることだろう。それが嫌で苦痛な人は道を誤ったのかも知れない。小使いから社長まで演じる必要もある。男芸者や旅行代理店員であることもある。いろんな役割を演じる役者である。悲しきピエロであることもあるだろう。それがあなたの人生に多彩な色と香りを添えてくれる。

 「体験こそ師である」、その体験を得る機会を授かったことを感謝すべきである。

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業務報告の書き方

業務報告は、基本的に各人が書きたいことを書くことで良いと思いますが、以下の点
を参考にして下さい。

1.毎月25日までに送付して下さい。
 貴方の作業は日本からの業務委託であるため、その資金をもとにどんな成果を日本に還元したかが問われます。FJというより国税庁の問題です。日本の商習慣として、「対価物に対する支払い」が原則です。つまり、貴方の業務を遂行するのに必要な資金は毎月日本から送金されますが、原則として「貴方がなにをやった、具体的にはその月の成果物(調査報告書、設計書、開発プログラム、技術評価報告書など)」があってはじめて日本から正当な金が送られる、という訳です。

 実際には毎月、業務委託契約で定められた金額が10日にFAIに支払われますが、国税庁対策の問題もあり、その前に技術サポート的な仕事の場合成果物がきちんと送付するのは難しいので、「Summary of activities」という形にまとめて(一枚)「作業内容」と「成果物」(DELIVERABLES)のタイトルを報告するようにしています。この報告書(英文)に、貴方が行った作業・成果物も含められます。そのため、あなたの業務報告が25日までにできるのが望ましいわけです。

2.長さはできるだけ一頁(30-50行)にまとめるのが良いでしょう。長くて100行が
目安でしょうか?個別テーマについては別のレポートで報告するのが良いでしょう。

3.内容は自由ですが、次を参考にして下さい。
 (1) 報告しておいた方が良い作業内容
 (2) 何をし、何が問題で、どう解決し、現状はどうか? 結論は? 今後の対策は?
 (3) 作業を通じて気が付いたこと。短期的・長期的課題と、それに対する自分なりの
  意見または取組姿勢を簡潔にのべる。
 (4) FJ日本への提言や建設的意見をのべるのも良いでしょう。

  いつも上記のような内容を書く必要はありません。
 たとえば、月によってつぎのような体裁であって良いでしょう。
 -業務報告(5/90) FTSC現状報告 (これが副題になります)
  FTSCの過去3ケ月、6ケ月などの総括的活動状況説明

 -業務報告(6/90) LUCASとの次期ビジネス関係について
  LUCASとの折衝・接触作業が多いとき、これに焦点を合わせて書く

 -業務報告(7/9)
  1.ISHIDO技術問題
  2.ISV接触状況
  3.技術サポートの効率化について
  (主な作業に関して簡潔に報告)…この形態が普通と考えても良い。

 -業務報告(8/90)
  最近のマルチメディア市場と動きとTOWNS技術支援でのISVとの接触経験を踏まえて
  今後、FJが取るべき方策について以下意見を述べさせていただく。
  (という形で入って、自分の意見を中心に述べていっても良い)

 -業務報告(10/90)
  (展示会出席報告とか特定市場や競合ベンダの動きといった調査報告概要でも良い)

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輸出入規制への対応〜米国外へのMAIL/FAX発送について〜

 FAIから米国外へのMAIL(レポート、資料、フロッピー、MT、ビデオテープなど)およびFAXについては、送付月日、宛先、内容、送り元および内容のGTDA/GTDR区分を明記した発送記録を残すことが義務付けられている。理由は、次の二つ。

(1) FAI駐在員活動は、日本FJからの業務委託資金で動いている。この資金で生み出された成果物の日付/内容/所在を明確にし、国税庁の査察に対処できるようにしておく必要がある。

(2) 米国政府(とくにDOD/DOC)の輸出規制に抵触しないことを明示する義務がある。昨年のレーガン年頭教書や東芝機械の問題以来、とくに知的所有権と国防に関連した情報流出には神経質になっている。非公開情報の不当入手・米国外への送付の禁止はもちろんのこととして、GTDR(制限付き一般技術情報)に属する疑いのあるものについては発送前に必ず、FAI法務部門(TOM DUFFY)および輸出/ 輸入規制部門(RON EDELSTEIN)に相談すること。

これまで、FAIからの正式レポートについては“SE88─XXX”の形式のレポート番号を振って、発信簿に各自が記録をし、日本との連絡等のメモや個人的なMAIL/FAXは各人が固有の管理をしてきた。しかし、SE正式レポートと個人管理のレポートの区分が不明確な点が残っている。今後、FAIからの送付レポート・資料の一元管理をするために以下のようにしたい。

(1)発送物(レポート、資料、フロッピー、MT、ビデオテープなど)には、添付の送り状MEMO一枚をカバーレターとして付ける。

1) MAILかFAXの区別をし、FAXの場合は枚数と相手先FAX番号を記入。自分でFAXしたときはFAX番号欄にDONEと記入。受取人(ADDRESSEE) の名前、所属(および住所) は英語で記入。DISTRIBUTIONの欄には日本語で宛先を記入。

2) レポート番号の形式は、"SE88-mmdd-n"(mm: 月、dd:日、n: 続き番号) とする。JaneteまたはPenny に発信を頼む場合は彼らが番号を確認する。自分で発信(FAX) するときは各人が発信簿をチェックし、記入する。FROM欄には必ず英語名を記入のこと。

3) SUBJECT 欄には、上段に日本語の表題、下段に英語のタイトルを記入


(2)このMEMOを付けてSecretary に発信を依頼。Secretary は英語のADDRESSEE と
SUBJECT およびFROMをもとにRep.No. を振り、発信簿に記入する。日本語タイトルの発信簿が必要であれば、各人が記入・管理すること。

(3)発信簿にファイルする必要のない(できない)添付資料・発送物(購入レポート・
書籍・雑誌記事コピー・フロッピー・MT・ビデオテープ等)については、その旨Secretary に指示すること。MESSAGE 欄に、何を送ったか内容が分かるようなメッセージを記入すること。

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情報収集と調査方法

1.調査専門会社の利用
 大手ではDATAQUEST、IDC、SRI、ADL、INPUT といった会社があり、いずれも日本支社をもっています。中小では数えきれないほどあり、新設されたり、買収されたり、つぶれたりして、この業界はダイナミックに常に変化している。通常、一年以上継続して特定業界・市場の情報を得たいときに利用する。

 会員制で年間5千ドルから3万ドルが相場です。詳細な統計データの入手だけでなく、時々刻々変化する市場・製品・技術動向についての情報や評価の入手が可能。特に重要なのはこうした会社に所属するIndustry Analystの意見です。技術に疎いmedia(新聞・雑誌記者など) が、新製品や市場・技術予測について意見を求めるためマーケティング上も彼らとの付き合いが大切です。

 特定テーマについての調査も依頼します。1万ドルから5万ドル、時には10万ドルの規模になります。期間は1〜6ケ月が普通です。

2.個人コンサルタント
 一般企業に勤め、同種の職を求めて幾つかの会社を渡り歩き、そうしてその分野の知識・技術・ノウハウをつけ、かつその業界での多くの知己を得たプロフェッショナルが、その人脈を有効に利用して調査・コンサルタントの仕事を請け負っている。彼らは、統計的なデータや市場分析データは上記の調査専門会社からや、後述する業界ニューズレター、商用データベースサービスなどから入手する。これを顧客の要件に合った形に仕上げ、自分の見解を付け加える。

 また、同業界の各社の情報入手も彼の人脈で可能となる。40代・50代のリタイヤした人が多い。また、つぎの就職先を見つけるまでの腰掛け的な個人コンサルタントや、特定の会社と契約ベースでやっている人もいる。米国のスタートアップの会社を対象に、日本市場での販売チャネル開拓の調査や日本企業との提携ネゴを仕事としている日本語が分かるコンサルタントもいる。

3.新聞・雑誌からの情報入手
 一般および業界別の新聞・雑誌を定期講読し、常に政治・経済・社会・業界の動きに眼を光らせておくのは当然です。米国では、実に様々な多くの情報誌があります。無償で講読できる業界誌も数多くあり、これらだけでも充分な情報が入手できる、といっても良い。

 これらの中で、前述した大手調査会社発行の調査分析レポートのダイジェストが紹介されることがあり、忙しい調査担当者にとっては便利な情報入手手段になります。その記事の内容だけでも、日本の人にとっては貴重な情報になることが多い。MARKET RESEARCH ASSOCIATE といったTITLE の人間に命じて、有用な記事を切り抜き、分野別( たとえば、IBM/DEC/ATT、CAD/CAM/CAE/AI/OA、製造/ 金融/ 証券など) にFILEしておき、ある程度たまった所で、業界動向調査報告書にまとめあげる、あるいは必要に応じて参照する、といった利用をします。詳細なデータ・情報が必要な時には、その記事の内容をたどってORIGINAL SOURCE にアクセスできます。また、多くの記事の最初または最後に記者の名前があるので、ここに電話して聞いたりもできます。

 さらに、前述した1.と2.のコンサルタントに意見をもとめたりもします。要はこうした業界( 同業者) の人間との付き合いが大事です。友達になることです。そして朝食や昼食をとりながら、その食事代だけで、いろいろ教えてもらうこともできます。


〔閑話休題〕
「新聞の切り抜き屋」という商売がある。たとえば、新しいマーケティングプログラムを発表したときなどは、BEACONという会社に頼んで、これに関連した記事を収集 して報告してもらう。この場合は、Public Relation 活動の成果がどのように現れ、効果が出ているかどうかを分析するのに必要な情報収集、というのが目的である。分析は我々がやる。

4.業界ニューズレター
新聞・雑誌のほかに、非常に限られた業界に照準を合わせて、週一回・月一回発行される情報誌 (業界ニューズレターと呼びます) が多くあります。私が関係している、たとえばコンピュータを使った設計・製造 (CAD/CAM またはCIM と呼びます) 分野だけでも、十数種類あります。その業界の会社・製品・技術・市場などの概要・動向・分析などの紹介があり、大変貴重です。米国では、個人の力量がものをいうことが多いため、どこそこの社長・マーケティング担当VP・R&D のヘッドなどがこんなことを言った、どこそこの会社のEXECUTIVE になった、自分で会社をはじめた、などといった情報も流れます。この裏で、RECRUITER やVENTURE CAPITALISTが動き回っているわけです。
こうした業界ニューズレターの発行者との付き合いもまた大変重要です。DR.ORR、KEN ANDERSON、BOB JOHNSONといったその業界で一目おかれている人間と友人になることです。彼らのマスメディアへの影響力・その情報を有益に利用しない手はない。業界ニューズレターは比較的安価で、年間数十ドルから数百ドルで講読できます。

5.調査レポート購入
前述の調査会社から、その時々のBUZZ WORD に応じて、いろんな調査レポートが発 行されます。これも貴重な情報源です。テーマ毎にまとまっているのが便利。通常数百ドルから数千ドルです。たとえば、FROST&SULLIVANと言う調査会社は、実にいろんな分野( 電気・科学・化学・医療・通信・新素材ETC)の調査レポートを発行しており、高くても千数百ドルで購入できます。数百ドルのレポートでも大変有用な情報入手が できる場合もあります。私が日本にいたときに購入した日本のレポートで10頁くらい (それも密度の粗い手書き) で10万円もしたのがありました。内容は米国の最新市場・技術動向に関するもので、今なら私が一日で書けるものです。米国の数百ドル(10万円以内) のレポートを翻訳し、OASYS で作成すれば、もっともらしい素晴らしい調査報告書になりかねない。

6.商用データベース
この数年日本でも商用データベースサービスがVANの普及とともに手軽に利用できるようになっていると思います。米国では10年程前から急速に普及し、あらゆる分野の情報データベースにアクセスし必要な情報の検索と入手が可能となっています。

前述した新聞・雑誌・業界ニュースレターなどに掲載された記事情報も、分野ごとに分類・整理され、データベースに格納されています。REASEARCH ASSOCIATE が日々の仕事として有用な情報を系統的に収集・分類し、調査分析レポート作成に利用することを先に述べましたが、商用データベースを利用すれば、必要な過去の記事も手軽かつ迅速に入手できます。情報検索のコツの一つは、キーワードの選び方です。これが適切であれば、数十種類の記事情報が十数分で入手でき、費用も十数ドル程度で済むことがあります。もっともヘボだと、一時間かかって、費用も数百ドルなんてことになりかねないですが。

夕方に日本から電話があり、「明日中に、某社新製品の開発の経緯・技術的特徴・製品戦略・市場での位置付け・既存製品との関係・市場や顧客の反応と影響・競合他社の反応等について報告して欲しい…」といった依頼があったときなど、データベースを検索し、関連記事を集めて報告するのに大変便利です。

7.TELEMARKETING
米国のマーケティングの先端が、このTELEMARKETING です。日本でも聞かれるようになったかも知れませんが、米国に比べると10年、いや20年は遅れているかも知れません。しかし、日本はいったん始まると予想以上の加速がつくので、5 〜10年後には、追いつくかも知れません。

"TELEMARKETING" という言葉は、米国ではもはや特殊用語ではなく、ごく一般の
言葉になっており、日常生活の一部になっているといえます。たとえば、とくに深夜のTV番組で、いくつかのチャネルでいつもやっているTVショッピングはその一つで、視 聴者は商品の案内を見て電話で注文します。休みの日などに電話がかかってきて、「VCR をもっていますか?CDプレーヤを買う予定はありますか?…」などといったアンケート調査もその一つです。また、私が担当しているソフトウェアのマーケティング・販売部門では、見込み顧客情報をデータベースに記憶し、毎日営業が見込み顧客に電話をして、購入意思のある顧客を絞り込み、販売していますが、これもTELEMARKETING と呼ばれるものです。顧客との会話で、どんなコンピュータを使っており、今後どんな機器を購入する予定か、どんなソフト製品に興味があるか、どんな機能を必要としているか…といった情報も収集し、データベースにリアルタイムで入力・蓄積しており、これを分析することにより、今後のマーケティング戦略や製品開発に反映しています。

前述した大手調査会社や個人コンサルタントも、市場調査にこのTELEMARKETING の手法を使うことがあります。もちろんDIRECT MAIL によるアンケート調査も頻繁に行われています。記入の手間への礼の意味で、一ドル紙幣が同封されてくることもあり ます。こんな時お金を返すわけにもいかず、返答しないとネコババしたような気分にさせられるため、忙しくても時間を割いて返答することになります。DIRECT MAIL の宛先リストは、一件数セントで買うことができます。たとえば、機械エンジニア対象の製品の市場調査や販売をするとしたとき、全米の、あるいはLA地域、NY地域といった地域別の機械エンジニアの住所リストを購入して、ここにDMを送付するわけです。あるいは無作為抽出して電話で調査をします。広い国土故に通信の手段は非常に発達しており、価格も日本に比べると格段に安く、それゆえまた有効利用されているわけです。

いずれにしても、調査・マーケティング・販売その他あらゆる活動にとって電話はなくてはならないものです。私なども、米国内だけでなく、日本とのコミュニケーションにE-MAILやFAX だけでなく、毎日電話を利用しています。移動中の車の中からも・・・。十数年前は、まだ文書を紙テープにパンチしてTELEX で送っていたのですから、隔世の感がします。名刺には、電話番号だけでなく、FAX 番号も書くようになっている。もっとも、FAX 利用は、米国より日本の方が進んでいます。米国では、とくに大学・研究所およびエンジニアの世界では、名刺にE-MAIL番号 (たとえば"hiraik@fai.com" )を印刷したりします。UNIX NETWORKは全世界に張り巡らされており、私の部門のnode computer に電話をかけて接続(OASYSでも可) すると世界の何百ケ所にいる何万人もの人間にメールをおくったり受け取ったりできます。また、USENIXというサービスがあって、PUBLIC DOMAIN の情報が毎日洪水のように送られてきます。



…ちょっと話が本論からはずれてしまいました。あと、調査活動でこれまで述べた
ものと劣らず有用なのは、つぎの二つです。

8. 大手調査会社主催のコンファレンス
通常、分野・トピックス毎に年1 〜2 回開催され、大きな市場の動きを知るのに便利です。期間は1 日〜3 日で参加費は 500〜900 ドルが相場です。その業界の人たちと知り合う良い機会になります。

9. Trade Show (Conference and Exhibition)
実に様々な多くのSHOWが全国的、地域的に毎週のように開催されています。日本と違ってSHOWは商売の場でもありますから、出展者も見学者も真面目で真剣です。開催期間は 2〜 5日間で、入場料は 3ドル〜15ドル( 展示会のみ) です。その業界の代表的ベンダが数多く展示しているので、各ブースを訪ねて話をすれば有益な情報が得られます。 1〜2 日参加すれば、価値ある十数頁の報告書が出来上がります。

ShowのConferenceに積極的に参加し、勉強したりUP-TO-DATEの情報を入手したりもします。こちらの方は参加費が高く、数十ドル〜数百ドルになります。通常、大きなショウではTUTORIALと技術セッションあるいはパネルディスカッションが展示会と並行して開催されるため、短期に市場・技術の状況を知るのに便利です。こうしたショウには毎年継続して参加するのが肝要です。市場予測は時間的流れの中で、過去・現在の分析を行い、事実を踏まえて、かつ自己の洞察力を頼りに将来を予測するわけですから……。

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